2016 ものラボワークショップ in 高山 第4回

去る11月18日、高山ワークショップの第4回「センサーを組み込もう!」が開催されました。

前回では班で1つの「ピタゴラ装置」製作に向けて、実際に手を動かしながら「パーツ」を作り始めた子供たちですが、今回はピタゴラ装置にアクセントを加えるべく、「センサー」の扱い方を体験します。

本ワークショップでいう「センサー」は、マイコン (Arduino) ・センサー(圧力・光・距離…)・出力(LED・ブザー・サーボモータ…)の3点を組み合わせたもので、「◯◯したら☓☓する」という仕組みひとまとまりを指すことにしています。

子供たちはこの日、「<圧力センサーをつまむ>と<LEDを光らせる>」というセンサーを組み立ててみることを通じて、センサーを学びます。

そしてセンサーの可能性を知り、自分の班のピタゴラにどんなアクセントを加えたいか考えてもらって、実際に装置に組み込んでいくのです。

この日の講座を担当したものラボスタッフの矢田が、その模様をお届けします。


まず、子供たちにとってはくどくなったかもしれませんが、前回のピタゴラ製作の復習から入りました。

ピタゴラとはどんなもので、自分たちは何のためにピタゴラをやるのか……。

最終回、保護者のみなさんを含めた大勢に、自分たちの班のピタゴラを発表してもらうことを少し意識してもらいたくて、ワークショップ全体の大きな流れを確認してもらったのです。

自分のプロダクトが人に見られるという意識は、ものづくりのプロセスにおいても非常に重要だからです。

一方で、このワークショップは隔週5回に分けて実施されるものですから、後半になるとその意識が少し薄れてしまうということはなくもないです。

といってもそんなことは杞憂だったかもしれません。

子供たちは前回の導入をよく覚えていてくれました。

「そんなの知ってるよ!」という声もありましたが、実はこのくどい導入にはもう2つ、目的があります。


1つは、「つなぎ」に注目してもらうことです。

つなぎ、それは班員それぞれが製作した「パーツ」をつなげて1つの大きな「装置」とするときに、かならず立ちはだかる壁です。

パーツそれ自体はスタートとゴールがあって完結していても、それが前後のパーツとうまくつながるようにできているわけではありません。

前後のパーツのスタートとゴールを相互に調整しながら、パーツ同士がつながっていくように作り変える必要が出てきます。

これが「つなぎ」です。

前回の講座で各班には班の装置の「設計図」を作ってもらい、班員それぞれのパーツをどういう順番で構成するか考えてもらっているわけですが、より具体的に完成をイメージすると、つなぎの作業が大事になってくるのがわかるかと思います。

つなぎに取り組むためにヒントになる考えは「持ち上げ」です。

基本的には「高いところから低いところへ」物体が動いていくのがピタゴラです。

しかしそれだけでは、とにかく高さを上げていかないといけません。

そこで、途中に「下から上へ持ち上げる」パーツがあると、登ったり下がったりする面白い装置ができるのです。

持ち上げの方法はいろいろあって、滑車を使ったエレベータとか、磁力ないしバネの力を使った持ち上げがあるのですが、こういった本当の「持ち上げ」の他に、「上の玉を動かす」という間接的な方法もあり、奥が深いです。

もちろんこうして教えてもらうまでもなく「持ち上げ」の重要性に気づいていたり、実際にそういったパーツを製作している子供たちもいます。

なので、そういった子供たちにとってはこの言及も「確認」でしかないですが、全体の製作の流れの中で「つなぎ」という言葉が確保し共有する役割によって、彼らをそっと後押しできていれば幸いです。


一方、もう一つの目的は、「センサー」の導入です。

センサーの「◯◯したら☓☓する」という仕組みは、まさしくこの「つなぎ」にも使えます。

さらに、装置全体のスタートないしゴールを面白くすることにも使えますよね。

そういうわけで、長い前フリを経て、満を持してセンサーが子供たちの前に現れるのです。

子供たちに例として見せたのは、「距離センサーでチョロQが近づくのを検知して、ピタゴラスイッチのテーマを流すとともにサーボモータで旗を上げる」というものです。

センサーを見るのが初めての子も、経験済みの子も、ピタゴラに組み込むという文脈での応用性を強く意識した上記構成の動作を見て、興味津々の様子でした。

どうやらつかみはバッチリのようです。

ものラボワークショップにおけるセンサー体験は毎年各場所で実施しているのですが、一貫しているのは「ペアでの組み立て」という方針です。

センサーの概念は、二人で考えるという体験にはもってこいの難易度かと思うので、そのように設定しています。

各班でペアに分かれてセンサーキットを得た子供たちに、さっそく冒頭で紹介した「<圧力センサーをつまむ>と<LEDを光らせる>」センサーを組み立ててもらいます。

マイコンの仕組み、電気の流れ方、電子回路の組み方を順を追って説明しながら、1ステップずつ進めていく方式です。

子供たちはそれぞれに集中した様子で、回路を組んでいきました。

この間は、各班についてもらっている高山工業高校生スタッフの個別指導にも助けられながらの作業です。

センサーをつまんで実際にLEDを光らせることができたペアからは小さな歓声が聞こえるなどしました。


ところで、センサー体験の時間はまだ余裕があります。

無事にセンサーを組むことができた子供たちには、実は追加課題を用意しておきました。

実はこの体験に利用したマイコンには「隠し機能」がある、と。

マイコンに書かれたプログラムは、LEDを3個までつなげることができ、圧力センサーをつまむ強さに比例して順番に点灯するようにしてあったのです。

さらに強く圧力センサーをつまむと、いろんなメロディがブザーから流れる仕組みになっていました。

この課題については、ほとんど解説もヒントも出さず、最初の課題で得た知識+αで解決するように指示するにとどめました。

子供たちは優秀で、着々と課題をすすめ、十数分後にはそこかしこからメロディが聞こえてくるまでになりました。


こうしてセンサー体験は成功裏に終わり、子供たちはピタゴラ製作に戻ります。

新しい武器、センサーをひっさげて。

ここからのピタゴラ製作の様子は前回とそう変わりはありませんが、センサーを必ず1つは班のピタゴラに組み込んでもらうことにしていて、班の1人・2人がセンサー担当になって新しいアクセントを考えます。

私は彼らの要望を踏まえてセンサーを準備し、彼らに託します。

といっても今回はこちらの準備不足で特定の部品が足りず、次週まで待ってもらうことになってしまったのですが……。

センサー担当の子供たちは「◯◯したら☓☓する」のいろんなバリエーションを楽しげに語ってくれます。

中には回路の接続も自分でやってしまうくらいに、センサーを気に入ってくれた子もいましたし、すでにご家庭で体験していて、高度なことを質問しに来てくれる子もいました。

次回はこのセンサーを含め、ピタゴラが班に1つ出来上がります。

完成を楽しみに待ちたいと思います。


さて、この日の反省としては、次回のワークショップにおけるセンサーの位置づけをどうするかを挙げられます。

これまでものラボワークショップでは、センサー講座でマイコンのプログラミングをしてもらってはいません。

しかし、この日の子供たちの様子から、もっと高度なことにチャレンジしてもらうのも面白いのではないかと思うようになりました。

また、全員に同じセンサーを組んでもらいましたが、班によって少し違うものを組んでもらうというのも一案です。

抜本的な改革があってもいいかな、などとぼんやり考えております。

ここからは保護者の方向けの情報ですが、今回利用したセンサーキットは、一式で4000円程度です。

また、キットを購入しなくても、オンライン上でセンサーを仮想的に組むことができます。

お子さんが興味を持たれたら、ぜひ触らせてあげてください。

センサーを使った電子工作においてはマイコンのプログラミングも必要ですが、「ビジュアルプログラミング」という手法があり、ドラッグ・アンド・ドロップでブロックを組み替えるようにしてプログラミングすることも可能です。

ぜひご検討ください。

以上、高山ワークショップ第4回でした。


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